「あっ、忘れてた」



私から離れ舌をペロッと出した颯平は、小走りで階段を駆けおりていった。

その後ろ姿をただ眺めていた。


再び一人になった部屋の中、床に散らばった荷物を片付けていく。


颯平は何も変わっていない。

変わったのは私だ。

ハル君に会う前は、確かに颯平のことが一番好きだった。

だけど、今は違う。

気付けばハル君のこと考えて、たくさん胸が苦しくなって。



「お邪魔しまーす」



数人の威勢のいい声が部屋まで響く。

そしてすぐに彼らは部屋にやってきた。



「初めまして」



とりあえず軽く会釈して頭を上げると、数人の男子と一番後ろに颯平とマネージャーの姿が映った。

挨拶も早々に颯平の部屋に私も含め六人が入り、少し窮屈さを感じながらベッドの端に座る。

なぜかその隣にはマネージャーが座った。

横目でそれを見ながら思う。


颯平がこの人の隣にいても胸が痛まなかった。

確かに嫌だな……とは思う。

だけど、ハル君と望さんの比ではない。


この胸の切なさ。

それはここにはいない、ハル君に対してのものなんだと。

そう思わずにはいられなかった。