颯平を傷つけて傷ついている自分が嫌で、ハル君のことで傷つく自分がもっと嫌で。
自らが蒔いた種は、急速に成長していく。
声を聞くだけで胸が反応してその分苦しくなって、愛しさと切なさがクロスする。
『って、紗夜香聞いてた?』
「……あっ、うん」
うわの空だった私は、突然の問いかけに咄嗟に嘘をついた。
けど、そんなことがハル君にばれない訳がない。
『本当は聞いてなかっただろ?』
「あっ、うん」
『ハハッ、分かりやすいし馬鹿正直だなー。で、どうした? 何かあったのか?』
そんな問いかけがさらに私を苦しめた。
自分が悪くて傷ついているのに、ハル君の言葉が嬉しくてすがりたくなる。
人は、つらい時ほど人の優しさに弱い。
そんなことを実感するほどに、優しさに寄りかかりたくなった。
だけど、分かっている。
それをすれば、さらに自分のこと嫌になって苦しくなるって。
優しさに寄りかかることは簡単だけど、それは単なるその場凌ぎに過ぎない。
だから私は「何でもないよ」と言って平静を装って電話を続けたんだ。