ベッドの上で布団に包まって、声をかけることを躊躇う。
体は依然快感の余韻に浸っていながらも、締め付けられる胸の痛みとのバランスに、崩れ落ちてしまいそうだった。
可愛いと思った颯平のこと抱き締めたくなった。
好きだと囁かれて嬉しかった。
だから、私も好きなんだって思いたかった。
……思いたかったんだ。
沈黙を破るように、聞き慣れた音が聞こえてくる。
マナーモードにしていなかった携帯は、微かな振動を部屋に響かせて着信を伝える。
私のバッグを持ち上げた颯平はいつも通りに接してくれて、それがまた胸を痛ませる。
顔の筋肉を引きつらせながら、何かしらの表情を浮かべようと努力して。
ピンポーン――。
まるで助け船のような来客に、安堵の気持ちが浮かび上がる。
「ちょっと出てくる」
笑顔を浮かべてくれた颯平が部屋を出ていくのを見送って、ようやく肩の力が抜けて顔の緊張も取れた気がした。
「誰だろ?」
取り出した携帯のディスプレイに表示されているのは知らない番号。
普段の私なら、何となく怖くて取らない。
だけどこの時ばかりは、何でもいいからすがりつきたかった……のかもしれない。
それが、さらに自分自身を嫌になってしまう結果になるとは知りもしないで。