「アハハッ。顔、真っ赤じゃん」
「いや、これは……そのー。何でもない」
いつからいたんだろう。
まさか、見られた?
いやいや。さっき確認した時はいなかったし。
「変なの。ま、いっか。さっき電話しても出なかったからさ、迎えに行くってメールしたんだけど」
私はゆっくり立ち上がり、再び箱を落とさないように気を付けながら携帯を取り出した。
「俺んち、今何もないからさ、どこかで買い物でもしようかと思って」
不在着信に新着メール。
それに気付かないぐらい、緊張してたのかな。
「じゃあ、行こっか」
そう言って触れてきた手に指を絡ませ、二人で並んで歩くには狭い階段を降りていく。
一歩一歩近づく。
颯平の家へと。
緊張から滲み出る汗。
だけど、前を見れば大きな背中があって、優しく微笑むその姿が少しだけ心を落ち着かせる。
そう。
私はこの手に引かれ、このまま流れに身を任せればいい。
今日、私は……
颯平とするんだ。