だから握り返す。
ギュッと、
颯平を離さないように。
それに微笑む颯平を、その笑顔を失わない為に。
「紗夜香、こっち」
「ん……」
路地裏は人通りも少なくて、木々の騒めく音しか耳に入らない。
暗がりを照らす外灯から離れ、お互いの顔さえハッキリと見えない中、近づく顔。
そっと唇が触れた。
何度も繰り返され火照る体。
漏れる吐息が辺りに響き渡る気がする。
……違った。
私たちは少なからず変わった。
「んっ……颯、平……誰か……来る、かも」
「いいよ……、気にしない」
少し強引になった颯平は、数えきれないぐらいのキスを落としてきた。
舌を絡ませ、深く激しく私を求めてくる。
今まで知らなかった世界と与えられる快感。
確実に私たちの関係は進んでいっている。
抱き寄せた体を優しく撫でる大きな手、伝わる胸の鼓動が伝染していく。
「もう……恥ずかしいし」
「だって、紗夜香が可愛いんだから仕方ないじゃん」
体を少し離して見下ろす颯平は、以前と変わらず照れながら微笑んでいた。