フゥーっと息を吐く音。

私を捉える視線。

口元が緩み、優しい微笑みを見せた。



「ハハッ。よく分かったな?」



……分かるよ。

私、ハル君のこと気になって、無意識のうちに見てたみたいなんだから。



「あっ、悪い。さっきのナシな。生徒誘ったりしたら確かにやばいもんなー」

「待って!! 私、大学見学してみたい。将来のこととか今はまだ決まってないけど、一つの選択肢として出来ることなら見てみたいなって。先生が言ったんだから、今更無理とかナシだよ」

「……紗夜香も言うようになったな」

「先生に似てきたんですよーだ」



軽く舌を出すと小突かれて、仕方ないな……と呟いたハル君に向かって小指を差し出す。



「約束ね」



触れて絡まって、伝わる。

それが、どれだけ私の心を揺さ振るのだろう。

ハル君にとっては何ともないことでも、私にとっては心臓を跳ね上がらせるぐらい重大なことで。



「ハァー……仕方ない、自分の蒔いた種だしな。紗夜香のお母さんには俺から言うよ。それから大学に連れて行ってやる。それと、ついでに携帯も教えておくから」



思いもよらないことに、私の心臓はさらに激しく動きだした。