「そんなに気になるなら」



ずっと黙っている私を誤解したみたい。

訂正する気も起きずに見てみると、ハル君にしては珍しく言いにくそうに、だけど困った顔をしながらも頬を緩めながら話し始めた。



「代わりと言ったらあれだけど、望が今度会いたいって言ってるんだ」



ドクン――ッ。



「亘のこともあったしお詫びもしたいって言ってたけど、結局はただ自分が会いたいんだろうな……。よければ大学見学も兼ねて、遊びに来ないか?」



鈍器で殴られたかのような胸の痛みは、次第に締め付けてゆく。

望、さん。



「……先生」

「ん?」

「望さんには弱いんだね? 生徒誘ったりして大丈夫なの?」



上手く笑えてるかな。

声震えてないかな。


あっ、止まった。

ハル君の珍しい姿に、私はいくつものことを確信した。



「ねぇ、先生?」



知りたくないけど、知りたい。



「先生の忘れられない人って、望さんなんでしょ」



部屋の中を静かにすきま風が吹き、パラパラと紙の捲れる音が聞こえてきた。