認めたくなくて否定したくて、目を逸らしていた想いが溢れだす。
いつからなのかいっぱいになっていて、何とか零れずにいたそれが一粒。
たった一粒、零れた。
それが最後の砦を決壊した。
「おーい、何ボーッとして……」
いつからなんだろう。
きっかけはなんだろう。
「本当に気にしなくていいから、早く彼氏に電話してあげな」
今はハル君の優しさがつらい。
颯平のところに送り出すハル君に傷ついている。
上手く笑えているかも分からない状態で小さく頷き、またハル君から離れて電話をかけに行った。
耳に届く颯平の嬉しそうな声に、胸に針が次々と刺さる。
あの時――。
颯平がマネージャーとのことをすべて話し終えて誤解が解けた時。
もう一度やり直そうという言葉と差し伸べられた手を取って、私はこれから先も颯平と一緒にいようって思った。
ハル君はただの家庭教師の先生だと言って、さっきのは階段から落ちそうになった私を助けてくれただけだと言った。
ホッとした表情を浮かべる颯平に、携帯を買ったのも颯平が言ったからだよと伝えた。
自分の気持ちを誤魔化して嘘をついた。
私の知らない颯平の姿を見て聞いて、胸が痛くなるのは好きだからだと思ったから。
実際好き。
だけど……。