「んー、解けた!!」

「よし、それじゃあひとまず休憩しようか」



いつもの二時間の家庭教師の時間が終わり、ようやく一息ついてハル君と二人オレンジジュースを口にする。

ついでにハル君のために買ってきたクッキーを持ってきて、勉強道具を退けたテーブルの上に広げて食べながら、



「先生?」

「ん?」

「今日、本当にまだ教えてくれるの?」



気になっていたことを問いかけた。

ハル君は悪くないのにあの日のお詫びと言って、今日は二回分の時間教えるとお母さんに言っていたのだ。



「何? 紗夜香この後予定あったりする?」

「バイトは三時からだから大丈夫だけど……。先生こそ予定ないの?」

「ハハッ。ないからこうして来てんじゃん。それとも、もう止めたい?」

「や、止めたくないっ!!」



あっ。

思わず立ち上がってしまったことが恥ずかしくて、俯きながらゆっくり腰を下ろす。

こっそり見てみたハル君は、そんな私を見てまた肩を鳴らして笑っていた。


ハル君といると自分が自分らしくいられない。

恥ずかしいことばかりなのに、それでも一緒にいたい。

そんな気持ちが日を増すごとにジワジワと私の中を侵食していく。



「にしても、俺って紗夜香のお母さんに信頼されてるな」

「あ、うん。先生のことかなり気に入ってるよ」



私だけでなくお母さんも、本当にハル君のことを気に入っている。

私の理数系の成績が上がったことはもちろんのこと、ハル君の物腰や人柄に対して好感を抱いているようなのだ。



「今、二人きりなのにな」