参考書をパラパラと捲っていた手が止まり、視線が私に注がれる。
前髪をふわりとなびかせて眼鏡を外し、じりじりと近づいてくるハル君の顔。
ドクン、ドクン。
緊張が走る。
「何て答えて欲しい?」
意地悪気に鼻を鳴らすと、するりと手が伸びてきた。
急な出来事に頭がついていかず、戸惑いを隠しきれない。
「あ、えっと」
「ん?」
「あ、あ……うにゅ?」
えっ!?
もしかして。
ほっぺた、つねられた?
何よ。
何よ、何よ、何なのよーっ!!
「もう、先生っ!!」
「ごめんごめん。だって紗夜香があまりにも真剣な顔してるからさ」
「だからって!! ちょっとドキドキしちゃったじゃん」
「へぇー」
あ、今、私。
「いやいや今のなし!! 言い間違いだから忘れて」
つい口走った言葉に、みるみる顔が赤くなっていくのが分かる。
一人で挙動不審になって、訳も分からず手や顔を振り回すし。
最悪だ、私。