いつもと違うのは明るく差し込む光と、部屋のドアが全開であるということ。
小さなテーブルの上に広げられた参考書に教科書、授業で使ったノートや筆記用具。
後から入ってきたハル君は目の前の定位置に座っていて、息遣いまで聞こえるぐらい近い。
それはいつものことなのに、いつも以上に緊張しているのは、
「先生、この前はごめんね」
「彼氏の誤解とけた?」
「あ、うん」
「そっか、よかったな。これで逃げ帰ってきたら、何してやろうかと思ってたんだよ」
お母さんはパートに出ていって、今、家に二人きりだからだ。
「けど……。先生、私を庇って来れなくなったって嘘の連絡して。先生悪くないのに本当にごめんなさい」
「ハハッ、気にするなって」
「でも……」
あの日、ハル君が家庭教師に来れなくなったって連絡してくれたから、颯平とちゃんと話をすることができた。
その代わりハル君には嘘をつかせてしまい、あの日の代わりとして今日家庭教師に来てくれたわけなんだけど、
「何でそこまでしてくれるの?」
ハル君にとって私はただのいち生徒。
なのに。