順を追ってこと細かに話しをしていく颯平。

それを黙って聞いていた。

そして、



「……つまり、あれは私の勘違いってわけなんだね」



話を一通り聞き終わった後、そう呟くしかできなかった。

颯平は軽く頷く。


今日はたまたま先輩たちがいたけれど、普段はマネージャーと二人で帰っているらしい。

と言うのも、一年だけが部活の後片付けで遅くなって、その一年の中で唯一電車の二人。

だから、女一人で帰らすのも危ないということで。


あの日――。

颯平の話によれば、こういうことだ。


いつも通り二人で帰っていると、学校を出て少ししたところでマネージャーの元カレが現れた。

二人を見て勘違いした元カレは、突然颯平に向かって殴りかかってきた。

けれど、それをうまく交わした颯平は逆に元カレの胸ぐらを掴み、


「好きなら相手を困らせるようなことするんじゃねーよ!!」


そう言って睨みをきかせた。

パッと手を離すと元カレはその場に尻餅をつき、悲痛な表情を浮かべたらしい。


どうやらマネージャーから一方的に別れを告げられて、納得がいかないままストーカーまがいの行動を起こすことになったようで。

地面にうなだれたまま言葉を吐き捨てた。


「瀬菜のためなら何だって出来んだよ。他の男にとられるぐらいなら、死んだほうがマシなんだよ……」