N高のグラウンドで彼女の後姿を見つめていた颯平。
そして、私が駅のホームの自動販売機の陰に隠れて見たのは、その彼女と二人で並んで歩いてきた颯平だった。
「瀬菜は」
「セナって……マネージャー?」
「あっ、うん」
下の名前で呼ぶぐらい仲がいいんだ。
何だかやっぱりモヤモヤする。
私だって高校で新しい男友達ができて、お互いに下の名前で呼びあったりしているのに。
こんなにも気になってしまうのは、あんな場面を見たせいなのかもしれない。
「瀬菜とは帰り道が同じだから、部活帰りに一緒に帰るようになって。何て言うかな。気も合うし、お互いいろんな話をしてたわけなんだけどさ」
両手拳でスカートを握り締め、俯いて息を呑む。
嫌な予感が頭をよぎる。
好きになってしまった……って言われるんじゃないかって、悪い意味で胸のドキドキは最高潮に達しかけていた。
「ある日、相談されたんだ」
「相談?」
顔を上げて颯平を覗き込む。
予想とは違う答えが返ってきて、少しだけ肩の力が抜けていく。
「うん。元カレに付きまとわれて困ってるって」
「そっか。颯平って優しいから、放っておけなかったんだ?」
凄く優しくて不器用な人だから、そんなことを聞いて黙ってはいられないよね。
それが私が知る颯平だから。