「紗夜香の話聞かせてよ。訳もなく俺のこと避けてたわけじゃないんだろ?」
そう言って歩きだしてベンチに腰掛けると、砂を払って私が座るように促した。
たった一ヶ月。
その間に颯平が凄く変わった気がする。
確かに私の前から走り去ったさっきまでの颯平は、昔と何一つ変わっていない気がしたけど。
今、こうやって穏やかに話しかける彼は何だか知らない人みたいで、急に距離を感じて胸が締め付けられる。
「紗夜香?」
「あっ……うん。私、見たんだ」
モヤモヤとした感情が私を取り巻く。
だけど今は、話しをしないといけないんだ。
その為に颯平に会いに来たんだから。
「一ヶ月前、N高に行ったことがあって、その時」
ずっとずっと、自分の胸の中に留めていたこと。
あの日私が見た光景。
包み隠さず全てを話し終えた後、長い沈黙だけが続いた。
そして……、
「そっか、俺のせいだったってわけか」
颯平のため息によってそれは破られた。
「違うよ。颯平だけが悪いわけじゃない」
「理由はどうであれ、俺が不安にさせたってことは事実だろ。ごめん」
悲しい顔が
見たいわけじゃない。
擦れた声が
聞きたいわけじゃない。
それでも私も言うべきことがあるから、知りたいことがあるから、
「何で、抱き締めてたの?」
あの日の真相を聞かないといけないんだ。