遠くから振り向いた颯平。

私と目が合うとゆっくりと視線を逸らし、夜空を見上げてブランコを揺らしていた。

私はゆっくりと公園の中に、颯平に近づいていく。

心臓が今にも破裂しそうなほど動いてる。

緊張からか喉がカラッカラに渇いてくる。



「よっ……と」

「えっ?」



目の前まできたところで、突然颯平がブランコから降りた。

ギーッギーッと音を立て、ブランコは揺れている。

颯平?


私の目の前に立った颯平は、少し大人びた表情で微笑んだ。

月の光が優しくその姿を照らす。



「ごめんな」



そして、私が言うべき言葉を言った。



「何で颯平が謝るの? じゃなくて、私こそごめんなさい」

「アハハッ、まねっこ」

「ちょっと! 真剣に言っているのに茶化さないでよ」



分からない。

颯平が何をしたいのかが。



「ハハッ、ハ」

「……颯、平?」

「覚えてる?」



視線は私を通り越し、その先の公園の入り口付近を見つめていた。

私もとりあえずその方向を見る。



「ここから始まったんだよな、俺たち」



懐かしむように遠い目をした颯平は、夜風に吹かれて髪がなびいていた。