「ごめんなさい」



呟いた言葉が届くわけもなく。

胸がズキズキと痛む。

向き合おうとした決心も、話をしようとした勇気も、見事に粉々に打ち砕かれた。


自分だけが傷ついたような顔して容赦なく颯平を傷つけて。

何を言ったって傷つけることしかできない。

それならいっそのこと、



「もう、無理かも……」



このまま自然消滅がいいのかもしれない。


俯くと涙が零れそうで空を見上げた。

夕日に染まる雲が空一面に広がっている。

漏れるオレンジの光がやけに眩しく霞んで見える。


私は、頬を伝う冷たいものを振り落とすように、顔をぶんぶんと横に振った。

そして一歩。

ようやく踏み出したところで、手の中でそれは再び振るえだした。



「もしもし……えっ? うん、……うん、分かった」



通話の終わった携帯を閉じて、両手でギュッと握り締める。

唇を噛み締めて目を閉じた。

荒れる心に穏やかな風が吹く。


思い出す言葉に踏み出した一歩は、やっぱり背中を押されたから。