「えっ、誰?」
訝しげな声が耳に届く。
怪訝そうに私の顔を見つめる人。
いち早く私に反応したのは、私が颯平を避ける原因となった人だった。
多分、サッカー部のマネージャーだよね?
あの日と同じように颯平の横にいて、ただ違うのは、
「瑞沢の制服じゃん!! 何ー、颯平のコレ?」
小指を立ててはやし立てる男の子たちが、周りにいたことだった。
よかった。
二人きりじゃない。
ホッとしたのも束の間。
颯平は目も合わそうとせず、それどころか背中を向けたまま。
その背中が静かな怒りを表しているようで、おじ気付きそう。
「そ」
「今さら何のようですか?」
「は?」
何でこの子が。
「おい、やめろよ」
「だって!! 今まで」
「やめろって!!」
静寂と化した辺りに電車到着のアナウンス。
ベルが鳴り響き、
「悪い……」
そんな颯平の呟く声が聞こえ、振り返って私を見つめる。
何も言わずに手をとると、程なく到着した電車にみんなから離れて飛び乗った。