ハル、君……じゃない。

この声は。


どうして。どうして気付かなかったんだろう。

N高にいなかったんだから、もしかしたらここで会う可能性だってあるということに。



「颯、平……」



久しぶりに見た顔は悲痛に歪んでいて、きっとその表情をさせているのは私。

ハル君を間に挟んで、ホームから見下ろす颯平とホームを見上げる私。


いつから?

どこから見ていたの?


一気に血の気が引いていく。

何か言わないと、そう思うのに声が上手く出せない。



「そういうことかよ」



吐き捨てるように呟かれた声が届き、視界から一気に消える。


違う。

違うよ、颯平!!

だけど、追いかけようとした私の足は止まった。



「私……」



本当に違うって言えるの?

避けていた理由は何にしても、私の気持ちが揺れていたことは事実だから。

ハル君のことで嬉しくなったり、ドキドキしたり。

落ち込んだり、胸が苦しくなったり。


それでも颯平を裏切ってなかったなんて、言える?