思わず火照る顔。
密着した体が緊張のあまり硬直する。
ドキドキと。
この胸の鼓動は、踏み外したことに驚いたせいなのか。
それとも、事故とはいえハル君と密着しているからなのか。
ううん。
そんなことはどうだっていい。
「大丈夫?」
「うん、ごめんね」
見上げて見たハル君の顔から視線を逸らせなくて、私の体が警笛を鳴らす。
これ以上、好きになったらダメだって。
多分。そう思っている時点でかなり重症。
とりあえず、この胸の高鳴りを沈めないとどうしようもない。
頭の片隅に微かによぎる颯平の存在。
そして、ハル君が忘れられないという女の人。
だけど……。
力強い腕の温もりを、私を見下ろす視線を、すべて独占したくなって。
少しだけ、ハル君の服をギュッと握り締めた。
「ったく、気を付けろよ?」
掴んでいたと思ったハル君の腕は、いとも簡単に私の手から擦り抜けていく。
ぶっきらぼうな言い方だけど優しい笑顔で、軽く私の頭に触れて再び歩きだす。
その後ろ姿を見ていると、
「せ……」
何だかいてもたってもいられなくて、私はハル君を呼ぼうとした。
「紗……夜香?」