日が傾いて地平線はオレンジ色に染まり、穏やかな時間にカラスが間抜けに鳴いている。
まるで私たちに向かって「アホ」と言っているかのように。
「亘さん大丈夫かな……」
「あー、自業自得だし。いつものことだから平気だろ」
「望さんみたいな綺麗な彼女がいるのに、何で浮気なんかするんだろう」
「俺には分かんねーな」
家庭教師の時間が迫ってきていた私は、ハル君と一緒に家に帰ることとなり、香里奈はそのまま一人で帰って行った。
あの二人を置いて。
その後どうなるのか少し心配だけど。
「友達としてはいいやつなんだけどな。望もどうして亘に愛想つかさないんだか」
そう言うハル君の顔を見上げてみて、胸が締め付けられる。
「先生、まさか」
「ん?」
気付いてなかった?
無意識だった?
「ううん、やっぱ何でもない、デス」
「ハハッ。何だそれ」
もういつものハル君に戻っていたけれど、さっきのあの顔は。
“……ずっと忘れられない人がいて、それ以上の人が見つからないからかな”
少し前、公園でハル君が言った言葉。
もしかして。
もしかして。
それって。