微かに聞こえてくる足音。
そのうち辺りの騒ぎ声や楽しそうな声、絶叫している声が次々と聞こえだした。
さらにはとてつもないスピードで風を切る音や、地響きがするほど大きな機械の動く音まで聞こえだす。
聞くだけならどうってことない。
今までだって何度か遊びにきているわけだし。
けど、けど……っ。
「何、あんた苦手なの?」
いつの間にか私の目の前まで来ていた彼は、前髪を垂らして私を見下ろしながら問いかけた。
それに小さく頷くのが精一杯。
「それなら好都合」
あっ、笑った。
……じゃなくて。
“好都合”の意味するところは分からないけれど、つまり乗るってことだよね?
目の前の彼の顔が近いことなんて気にもならなかった。
それよりも何よりも、その後ろで嘲笑うかのようにそびえ立つアトラクションから目が離せない。
無理無理、
……絶対無理!!