……有無を言わせないところも、ハル君とそっくり。
課外のない月曜の放課後。
HRが終わると同時に、駅まで猛ダッシュさせられた。
ハル君が家庭教師に来る日だけど、その前に颯平の通うN高へと香里奈に連れられて到着。
一ヶ月ぶりのN高。
当たり前だけど、この前と大した変わりもなく、帰宅する生徒や部活に励む生徒で溢れていた。
「やっぱり、また今度に……」
心の準備ができていないというか、今さら何て声をかければいいかとか。
怖気づいてしまった。
「ここまできて何言ってんの!! 時間が経てば経つほど話かけづらくなるってもんでしょ?」
「は、はい」
気が重くなっていく。
ドキドキと悪い意味で心臓が激しく鳴り響く。
ここまで来ておきながら諦めの悪い私。
きっと香里奈がいなかったら、N高までくることもなかっただろう。
「んー、サッカー部の姿が見当たらないんだけど?」
そう言う香里奈につられて見渡すN高のグラウンドには、一人としてサッカー部らしき人がいなくて、私は少しホッとした。
「本当だ。じゃあまた今度にしよ?」
「電話してみればいいじゃん」
「……」
何を言ってもこの状況から逃れられない。
そう判断した私は、諦めのため息をついてスクールバッグから携帯を取り出した。
横にぴったりとくっつく鋭い監視の目。
仕方ない。
私は電話帳から颯平の番号を探し出した。
この時、私も香里奈も携帯に集中していて周りが見えていなかった。
だから、近づく人影にまったく気付かなかったんだ。
「紗……夜香?」