「違うよ。春斗さんのことじゃない」



私の中のハル君は少し意地悪で強引で、だけど優しくて笑顔が可愛くて。

週に一回だけの私の先生。



「そっかー。てっきり春斗さんのことかと思ったんだけど」

「紛らわしくてゴメンネ」

「ううん、こっちこそゴメンネ」



私の席の周りから離れていく英美たち。

何だか本当に寂しそうで悲痛な表情で、本気で春斗さんのこと好きだったんだろうと漠然と思った。



「やっぱり春斗さんからすれば、高校生なんて恋愛対象外なんだよね」

「英美、次の恋探そ?」

「……そう、だよね」



聞こえてきた声が、胸に突き刺さる。

思わず耳を塞ぎたくなる。



「紗夜香……」

「あっ、な、何でもないよ」



一部始終を黙って見ていた香里奈は、はぁーとため息をつくと席を立った。



「今日、行くよ」