へっ?
突然声をかけられて振り向くと、クラスメイトの女子が数人立っていた。
「英美も春斗さんに本気だったんだ。全然相手にされなかったんだけど」
「いなくなってから一気に寂しくなっちゃったよね」
「えっ? ちょっと待って。春斗さん……って?」
一体誰の話をしているんだろう。
春と聞けばハル君しか頭に浮かばない私は、みんなの言う春斗さんがさっぱり分からずに首を傾げる。
すると、芽衣がものすごい剣幕で私に近づいて大きく口を開いた。
「春斗さんって、この前まで来ていた教育実習のあの春斗さんだよ!! 紗夜香ちゃんの言っていたハル君って春斗さんのことじゃないの?」
教育実習?
……あぁ。
あの騒がれていた、一瞬ハル君と勘違いした人のことね。
窓ガラス越しに校庭を眺めると、隙間から流れ込んだ風が髪をなびかせた。
片手で髪を押さえながら、思い出すあの日のこと。