何度目になるだろう。

大きなため息をついた香里奈は、一呼吸置いて私の顔をジッと見てきた。



「紗夜香は彼とこのまま別れてもいいの?」

「嫌だ……」



私は投げかけられた問いに何の迷いもなく答えていた。

きっとこれが本心だから。

ただ確かめるのが怖いだけ。



「もし、颯平の気持ちがあの人に向いていたらって考えると」

「はぁぁぁ。情けない!
自己中にも程があるし!!」



私の言葉を途中で遮った香里奈は大声で捲くし立てる。



「本当かどうかも分からないこと疑って。大体、紗夜香のほうがひどいじゃん。ハル君に気持ち傾いているんでしょ? 人のこと言う資格ないし!!」



ごもっとも。

あまりの大声にクラス中の視線がこちらに向いている気がする。

恥ずかしさのあまり肩をすくめて身を縮ませていく。

返す言葉も見つからず、口は固く閉じたまま。



「だけど、紗夜香のそんな馬鹿正直なところは憎めないんだよね。ハル君のこと言わなければ分からないことなのに」

「香里奈……」



顔色がみるみる穏やかになっていく。

優しい眼差しで私を見つめ、静かに微笑んだ。


あっ。

香里奈とハル君って少し似ている気がする。

見守るような優しさと、立ち止まった私の進むべき方向を気付かせてくれる。

そんなところが。



「ねぇ、紗夜香ちゃんも春斗さん好きだったの?」