画面をスクロールさせて、既に登録済みの颯平の名前を探し出す。

はぁぁぁ。

机に突っ伏して通話ボタンに手をかけたまま画面とにらめっこ。

何度同じことを繰り返しているのだろう。


バイトを始めて携帯を買ってからというもの、そんな時間が極端に増えた。

たった一度の勇気が持てずにズルズルときてしまい、そんな私の様子を香里奈はずっと黙って見ていただけだった。

だけど、さっき。

いつものように一緒にお昼ご飯を食べている時、何の前触れもなく突然切れた。

弁当箱を開ける前に携帯を開いてため息をつく私を見て。


いつも穏やかに私を見守るような優しい眼をしていた香里奈が、突然思いっきり机をダンッと叩いて立ち上がり、


「何があったのか言いな」


と、上から私を見下ろしながら低い声で言った。

あまりの豹変振りとその気迫に圧倒されて、


「は、はいっ」


と、私は思わずそう返事をしていた。

そして、しどろもどろになりながらも、これまでの経緯を順を追って話し始めたんだ。


遊園地で出会ったハル君のことが気になっていて、そうしたら偶然にも家庭教師の先生として再会したこと。

一緒に過ごしていくうちにどんどん惹かれていっていること。

それに対して颯平とは一ヶ月近く連絡をとっていないこと、その理由も……。


全てを話し終わった後には、眉間にシワを寄せて青筋を立てている香里奈が正面に座っていた。