「砂の山も似てるな」
「もぅ……ますます意味分かんないし」
頭の中をかき回されたかのように思考はぐちゃぐちゃ。
パンク寸前。
「コツコツ地道に掘っていっても、崩れるときは崩れる。つまり、頑張っても失敗するときは失敗する。
けど、何度でも作り直すことができるんだ。やり直すことは可能なんだよ」
「やり直すことが、できる?」
「あっ。雨止んだみたいだな」
雲の切れ間から光が差し込む。
地面の水たまりに光が反射して、キラキラと辺りを宝石のように輝かせる。
木々の葉からは雫が滴り、鳥のさえずりでも聞こえてきそうだ。
「紗夜香、あれ見て」
「うわーっ。綺麗ー!!」
ハル君が指差した先には、木々の間を架ける七色の虹がボンヤリと浮かび上がっている。
思わず息が漏れる。
私は暫くの間その光景に目を奪われて、ハル君と話していたことさえ忘れていた。
そう。
この日の空模様は、私の心そのものだった。
すぐには理解できなかった言葉の意味を知るのは、まだまだ先のこと。
だけどね、ハル君の話を聞いて言い合っているうちに、胸の中のしこりがポロポロと取れていったんだ。
ハル君の前では素の自分でいられる。
そして、ハル君も逃げずに受けとめて向き合ってくれる。
そんな関係がとても居心地がよくて、どんどん惹かれていく。
穏やかな彼と強引な彼。
まったく違う性格の違う魅力を持つ二人。
だけど私には颯平がいるんだから、ハル君へのこの想いは決して膨らませてはいけない。
そう思えば思うほど、
一緒にいればいるほど、
気持ちが膨らんでいくということを知りもしないで。