訳が分からないまま、私はひたすら彼についていっていた。

自分より頭一つ分ほど背の高い彼の広い背中から、静かな怒りを感じるのは気のせい?

何も言われないことがこんなに息苦しく感じるなんて初めて。


それなら逃げ出せばいいのに。

それもできないなんて何で?

さっきのナンパ男はあからさまな態度に嫌悪を抱いたけど。

今、前を歩く彼からはそんな感じがしないから?


それにしても一体どこに行くんだろう。

そんな疑問があるものの、怖くて声さえかけれずに口をつぐむ。


少しして、足を止めた彼が振り返った。



「あんた、絶叫系は?」



やっぱり脈絡のない問いかけに私も立ち止まり、目は丸くなっていたに違いない。

そして、少しずつクリアになっていく視界。

彼の後ろに見える巨大なアトラクション。


え?

えぇ?

これって……。



「行くぞ」



彼の言葉を頭の中で整理。

とか、呑気なこと言っている場合じゃない!!


や、やっぱり?

“行くぞ”ってことはそういうことだよね?

体が急に震えだす。

口はカタカタと音を立て、足はガクガクと震えて、立っているのがやっと。

目の前のアトラクションを前に血の気が引いていく。


無理、絶対無理!!