「やればできるじゃん」
不意にハル君がそう言うと最後の壁が崩れ落ち、砂を一握り握ったままの私の手は優しく掴まれた。
驚いて顔を上げると口角を上げてニヤッと悪戯っぽく笑い、ギュッと私の手を握りしめた。
「ハ、ハ……、先生?」
「クッ。動揺しずぎ。やっぱ紗夜香って面白いな」
もしかして。
また、からかわれた?
もう、今度という今度は。
私はハル君に勢い良く詰め寄ろうとした。
だけど、それより先に叫び声を上げてしまったんだ。
「あぁーっ!!」
それは、ほんの一瞬の出来事だった。
ちょっと砂の壁面に手がぶつかっただけなのに、跡形もなく崩れ落ちた山が無残にも二人の手を埋めてしまった。
凄く泣きたくなった。
今までの努力がすべて無駄になったような気がして。
それなのにハル君は涼しい顔をして、私の手を握りしめたまま山の中から取り出した。
砂は円形を描いて飛び散った。
「せっかく完成したのに……」
「形あるものはいつか壊れるかもしれない。だから、そんなに落ち込むことないよ。それに、ほらっ」
「?」
ゆっくりと手が離れていく。
握りしめたままの手の指が、ハル君の両手の指先で開かれていく。
ポトポトと砂は元ある場所へと落ちていった。