「たまには小さい頃に戻って、こういうことするのもいいもんだろ?」
「うん、あの頃に戻ったみたいで楽しい」
こういうことって年を重ねるにつれて、する機会もなくなるわけだけど。
やってみると案外夢中になって、一生懸命な自分がいる。
話している間にもトンネルはどんどん奥まで進んでいく。
そして、ポツリとハル君は言葉を漏らした。
「さっきさ、何だか元気がない感じだったから、今は嫌なことでも忘れて楽しめたらって思ってな。
トンネルの穴が繋がった瞬間は最高だろ?」
「先生……。あっ」
ハル君の気遣いに胸がほんのりと温かくなっていると、トンネルの穴が突き抜けた。
ハル君はまだ達していないみたいだから、それを黙ってそのまま掘り進めることにした。
私の言葉に首を傾げるハル君に「何でもないよ」と言って。
分かる気がする。
子どもの些細な遊びの一つだけど、思わず真剣になってしまう。
そして、本当にトンネルが貫通した瞬間は言いようのない達成感を感じたんだ。
さっきはそれどころじゃなかったんだけど。
今、そんな気分。
ハル君驚いてくれるかな。
私がハル君より早く穴を掘ったこと。
今のこの瞬間は、確かにいろいろなことを忘れて、目の前にある砂の山で楽しんでいた。
ハル君がどんな反応するだろうかと、期待に胸を躍らせながら。