だけどすぐに、私は罪悪感でいっぱいになった。



「そういや紗夜香って男慣れしてないけど、彼氏いないの?」

「……な、何よ突然」

「いや、ふと思ってね」



すっかりいつもの調子に戻ったハル君は、口角を上げて砂の上を音を立てながら私に詰め寄る。

反応を楽しんでいるかのように。



「い……。いる、よ」



一瞬言葉に詰まった。

ハル君で一色になっていた頭の中に、颯平が浮かんだから。

その存在をすっかり忘れて、ハル君との時間を楽しんでいた自分に気付かされたから。


颯平の行動に何か言える筋合いなんて私にはない。

たかがあれだけのことで、颯平を避けてしまった自分が情けない。



「また放心してるし。何かあった?」

「……何で?」

「何となく」



チクチクとトゲが刺さる。

この胸の痛みは何に対してなんだろう。



「何もないよ。……それより、先生こそ女扱い慣れてるっぽいし彼女いるんでしょ?」



話をすり替えてハル君に問い掛けると、急に視界から消えたと思ったら砂場の淵にドカッと腰をおろしていた。


ジャリッ――
っと、砂の擦れる音が聞こえる。

その一体の砂を無言で綺麗に払いのけた。

そこに座れと言われているような気がして、私はゆっくりと腰をおろす。


逆光の中、ほんの少しハル君の表情が曇っているように感じた。