「何て顔してんだよ」

「えっ。だって……先生がまだ子どもとか、訳分かんないこと言うから」

「ハハッ、そっか。そのうち紗夜香にも分かる時が来るよ」



いつもからかったりするけれど、たまに見せる真剣な表情や言葉。

私からすれば十分すぎるほど大人だと感じるのに。


分かんない。

理解できない。



「そのうちっていつ?」

「さぁな」

「うーっ、気になる! 先生、教えてよ!」



ハル君は教えてくれなかった。

穏やかに微笑しながら「言葉で伝えられるものではなく感じるものなんだ」と言うだけで。

そんなことを真剣に話してくれるハル君を見ながら、私が惹かれているのはこういう部分なのかもと思った。


初めの印象は本当に最悪だったのに、いつの間にかハル君のペースに巻き込まれていた。

私にとっては不思議な言動の数々が、気になってもっと知りたくなって。

からかったりもするけれど、真面目な部分もたくさんあって。

紡ぎだされる言葉が心に響く。

きっかけが何だったのかは定かではないけれど。


恋は、突然舞い降りてくることもあるんだね。

この胸の高鳴りを、

ハル君への想いを、

漠然と確信した瞬間だった。