ハル君の一挙一動が私の心をかき乱していく。
そんなことにさえ喜びを感じている。
どうしよう。
この気持ちが錯覚だなんて、もう思えなくなってきている。
「ごめん、からかいすぎた」
戻ってきた私にハル君は、笑顔を浮かべて少し屈んで視線を同じにすると、頭にポンッと手を乗せた。
バカ。
無自覚。
そんな行動が、更に私の心をかき乱していっているのに。
「まったく。ひどいんだから」
「だって紗夜香の反応って新鮮だし。ったく、男知らなすぎだろ」
「ハル君が大人なだけなんだよ」
だから私のこと子ども扱いするんだ。
大人なハル君からしてみれば私なんて。
少し卑屈になってふて腐れていたら、頭に乗せられていた手が離れた。
ハル君はフッと笑って顔を上げ、どこか遠くを見つめる。
そして、私が予想もしない言葉が頭上から降ってきた。
「いくつになっても大人には中々なれないよ。俺もまだ子どもだしな」
パチパチと大きく目を開いて瞬きをする。
ハル君が、子ども……?
何かを悟っているようなハル君の横顔は、今までに見たことがないほど大人びている。
それなのに“子ども”だと主張することがまったく理解できなかった。