「どうした?」

「ううん、何でもない!」

「にしては顔が赤いけど?」



手首より少し先まで入っていた右手を慌てて引っ込めて左手で覆い隠すと、何もかも見透かしているようにクスッと笑われた。

そっぽを向いて押し黙る。

この胸の高まりを沈めるように。


軽く触れた指先は、まるで電流が流れたかのように敏感に反応して、それがそのまま心臓を突き動かしている。

ドキドキ……と。

何だか苦しくて、呼吸の仕方さえ忘れてしまいそうなほど指先に神経が集中する。

ギュッと力を強めて握り締める。



「紗夜香?」

「はっ、はい!!」



一瞬の静寂の後、ハル君はお腹を抱えて笑いだした。

私は恥ずかしさでますます胸が激しく音を立てだす。


本当にハル君といると調子が狂ってしまう。

目を背けたくなる自分を曝け出し、信じられない行動をおこす。

恥ずかしいとこばかり見せているはずなのに、一緒にいると凄く居心地がいい。


颯平とは違う魅力に惹かれていく。そう……、惹かれていっているんだ。

いつから?

初めて会った時から?