何でもそれなりで。

何でも無難に。

それで器用にこなしてうまく渡ってきた。

積み重ねてきたものから、自分の出来る範囲での行動しかしなかった。


危険を冒してまでなんて、私の脳裏には浮かばなくて。

それなりの自信とプライドを持って、物事に取り組んでいた。


その結果。

高校に落ちるという挫折を味わって、ひどい絶望感に陥ったんだよね。

落ちるわけがないって思っていたから。



「まぁ、慎重とか地道って大切なことなんだけどな。紗夜香の場合はさ」

「うん」

「……」

「……って、続きが気になるとこでやめないでよ」

「んー、言ってもいい?」

「アハハッ。先生がそんなこと聞くなんて珍しい」

「ハハッ、確かに」



この時のハル君は少しだけおかしかった。

強引なんだけど……、ハル君にしては言葉を選んでいるというか、遠慮しているというか。

何かあったのかと思ってしまう。


手を休めてハル君の顔を覗き込んでみた。

と、ちょっと心配していたのも束の間で、



「逃げている気がするんだよな」



遠慮のない言葉が胸にグサリと突き刺さった。