山を積み上げていっては水を汲みにいき、何十分と同じことを繰り返しただろう。
ようやく完成した山は、私の膝上まである巨大な山となった。
「すごーい!! こんなに大きな山初めて作ったかも」
出来上がった山を前に何とも言えない達成感。
気持ちの高揚が抑えきれずに顔に出てしまう。
「まだだよ」
「えっ?」
「最後の仕上げ」
ハル君は山の下辺りの砂を掘り始めた。
「もしかしてトンネル?」
「そ。紗夜香は反対側から掘ってきて」
そう言えば、小さい頃もこうやって山を作った後トンネルを掘っていったなぁ。
崩さないように恐る恐る、少しずつ。
周りが焦れったくなって「もっと早く掘って」なんて言われていたっけ。
「紗夜香は慎重なんだな。地道にコツコツするタイプか」
「うん。小さい頃からこんな感じかな」
どんなに年を重ねていっても、元の性格がそんなに激しく変わることもない。
慎重。
地道。
無難。
何だか昔っからよく言われていたっけ。
「たまには危険を冒してでも、挑戦してみたら面白いよ?」
そう言ったハル君は、私がまだ入り口付近をゆっくりと掘っているのに対して、既に手首が見えなくなるぐらいまで掘っていた。