「生きてたって意味ない、か」



ため息まじりの声が聞こえてすぐに足音が聞こえ始めた。

それは少しずつ遠ざかっていく。


もう、あたしに構う理由もないしね……。

その場に一人取り残された私は、ただ俯いてその場に立ち尽くしていた。

何だかもうぐちゃぐちゃで心が追いつかない。

それでもまだ羞恥は持ち合わせていて、公衆の面前で泣くことを恥ずかしく思い、目に溜まった涙を拭う。


その時――。

ふと視線を感じて顔を上げると、なぜかさっきの彼が前方五メートルくらいのところで立ち止まっていた。

両ポケットに手を突っ込んで、こちらを凝視するかのようにジッと見つめ、私は呼吸を忘れて冷や汗を流す。

別にそんなに悪いことをしているわけでもないのに、なぜかびくついてしまう。

それは彼が年上であるが故か、それともその威圧的な態度のせいであるが故か、確定的なものはないけれど。


ただその視線が痛くて、やっぱりそこから動くことも喋ることもできなかった。