「誤魔化すの下手すぎ、顔に出すぎ! 本当に紗夜香は分かりやすいね」
香里奈は指をさしながら、私の顔を見て穏やかに微笑む。
「……そんなに分かる?」
「うん。N高に行ってからずっと様子がおかしいと思っていたけど、今はもっとね」
人が集まった掲示板の前から離れていきながら、背中をポンッと軽く叩かれる。
「ハハッ」
私は口を少し開けて作り笑いを浮かべていた。
何だかやりきれない気持ちを、誰にも打ち明けられず心に閉まっていた。
大したことじゃないことが、私にとってはそうじゃなくて。
心のモヤモヤは広がるばかり。
だから避けた。
家に来ても、電話が掛かってきても。
我ながら子どもっぽいことしているなという自覚はある。
けど……。
「あっ、携帯買ったら連絡してねー!」
「えっ? うん、もちろん」
核心部分には触れてこない香里奈だけど、心配してくれているように感じる。
話を逸らしてくれたみたい。
今はまだ、誰にも話す気にさえなれないんだ。
あのことを。
それさえ理解してくれているようだった。