駅の改札口前で香里奈と別れ、ホームへと続く階段を歩いていく。
ホームでは電車を待つN高の生徒で上下線ともざわついていて、少し居心地の悪さを感じながら端の方に身を寄せる。
特にすることもなくて手持ちぶたさになった私は、ゆっくりと空を見上げた。
夜空にかかる雲の隙間から鈍い光を放つ月。
今夜は満月に近いのかな。
その輪郭がボンヤリと浮かび上がっている。
風に流されて雲は少しずつ形を変え、時折月が顔を出して何だか薄気味悪い光を見せる。
何でだろう……。
胸がざわつく。
鼓動がハッキリと聞こえてくる。
そう。
こういう時の直感って結構当たるものなんだ。
遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきて、私は咄嗟に自動販売機の陰にその身を潜めた。
鼓動はさらにハッキリと聞こえてくる。
見つからないように少しだけ顔を出して、そして全てが繋がった気がした。
ふーん。
そういうこと、ね。
私は電車を一本遅らせて家へと帰っていった。
目の当たりにした光景に、悲しみの感情が沸き起こらずに苛立ちを覚える。
離れるっていうことがどういうことなのか、本当の意味でようやく少しだけ知れた気がするよ。
この日から、私は颯平を避けるようになったんだ。
そのせいで二人の距離が微妙にずれてきたことから目を逸らしながら。