私たちのN高サッカー部見学はそこで終わった。
「二人ともさっきからそこにいるけど、暇なら遊びに行こうよ?」
「結構です」
「んー、目当てのやつでもいるの?」
「そんなことあなたたちに関係ないでしょ」
私たちの背後にN高の男が近寄ってきたからだ。
まったく。
どんな学校の生徒だって、こういう軽い輩はいるわけで。
「いや、ホント二人とも可愛いし、まじ好みなんだけど」
「しつこい!! 行こっ」
香里奈が私の制服の袖を掴み、ぐいっと引っ張っていく。
それでもついてきて、何かと話し掛ける二人組の男たち。
私一人だったら手をこまねいていただろうけど、ハッキリと断る香里奈に感謝する。
ナンパ男には苦い思い出があるわけだし。
「そんなこと言わずにいこーよ」
「……先生呼ぶよ?」
しつこく食い下がってきた男たちに、香里奈はトドメの一言を放った。
綺麗な顔の眉間に皺を寄せて低い声で。
さすがに先生は呼ばれたくなかったのだろう。
男たちは軽く舌打ちをすると背を向けてこの場を去っていき、香里奈は負けじと盛大にため息をついていた。