聞こえてくる掛け声が辺りの建物にこだまする。
ランニングをしている生徒の後に続き、学生服を来た大勢の生徒が向かい側から歩いてくる。
多分、辺りを生徒指導の先生が徘徊しているんだろう。
白のカッターシャツ。
紺の膝下スカート。
白のハイソックス。
……なんてアンバランスな校則に則った着こなし。
もちろん学校の目が離れたら、直ぐ様スカートを三つぐらい折って、カッターシャツのボタンを数個外して、少しでも可愛く見せるんだろうけど。
「やっぱダサイし」って隣から香里奈の呟く声が聞こえてきて、私は想像して吹き出した。
「ふふっ。香里奈が着てるとこって想像できないね」
「ぜーったい無理!! 毎日生徒指導室に呼ばれる問題児になる自信あるね」
自信有りげに力説されて、さらに笑いがこみあげてくる。
おかげでモヤモヤとした気分も少し薄れ、N高の生徒を見てもそれ以上胸が痛むことはなかった。
ブロック塀の上のフェンスから、見渡すことができるグラウンド。
手前にはテニスコート。
その奥で走り込みをしている陸上部らしき人たち。
キョロキョロと視線を動かしてグラウンド内を見渡して。
自分でも信じられないけれど、たくさんの人の中からいとも簡単に颯平を見つけることができた。