あれ?
止まらない。
しいて言うなら手が勝手に動いていく。そんな感じ。
流れるようなペン運びに思わず目を疑う。
教え方一つでこうも違いがでるとは、夢にも思っていなかった。
「おつかれ〜、紗夜香どうだった?」
「へへっ」
小さくピースサインを作る。
我ながらいい手応えを感じ、顔のにやけが止まらない。
後は結果を待つのみ。
「今日課外休みだし、暇なら家に遊びに来ない?」
実力テストが終わり気分がよかった私は、そんな香里奈の誘いに乗って家に遊びに行くことにした。
いつもより二つ先の駅で乗り越し清算をして降り立つ駅。
それはすごく昔のことのように、懐かしい気持ちに襲われる場所だった。
あの時はやっぱり緊張していたからなのか、見たことがある景色なのに違った景色に見えてしまう。
駅前のロータリー、先まで続く街路樹、バス停。
あの日はここに様々な制服を着た学生がいて、駅に隣接するコンビニに流れる人と、横断歩道を渡って直進する人と別れていた。