「はぁ。あいつはどうしようもないな」
腰に手をあてて、ため息をつきながら遠くなっていく男を眺めている彼。
アッシュブラウンの色をした髪。
淡いグリーンのTシャツに白いシャツ、少し色の落ちたデニムのジーンズ姿。
ラフな格好だけど、どこか清潔感のある彼。
多分、無意識のうちにずっとその彼を眺めていたんだと思う。
不意にパッと目が合った。
重なったままの視線をなぜか逸らすことができなくて、さらには二人とも無言でこの上なく気まずい。
どうしよう。
何か言わないと。
そう思えば思うほど、頭の中でグルグルと思考が回り続ける。
そんな私に彼はとても柔らかな笑顔で微笑みかけてきてくれて、
「あ、あの……」
心の落ち着きを少し取り戻した私はお礼を言おうとしたんだけど、
「あんた、何やってんの?」
笑顔とは裏腹にその声は私を蔑むようにトーンも低くてトゲがあって、あまりの威圧に私の体は急に寒気が走って背筋が凍るような思いだった。