紘哉のツッコミを華麗に無視し、羽兎は彼の側を通り抜けていく。
その間、彼女のお腹は鳴りっぱなしだった。
「……食い意地だけは、人一倍だな」
羽兎に聞こえないよう、小さく呟く。
そして片手をポケットに突っ込み、彼女についていった。
着いた先はキッチンだった。
中からいい匂いがしてくる。
羽兎は、そっとキッチンのドアを開けた。
「あ、千尋さん!と、紘子ちゃん!」
「え?あ、羽兎ちゃん!?」
突然名前を呼ばれ、千尋はビクリと肩を震わせた。
羽兎はニッコリ笑い、キッチンの中に入っていく。
「千尋さん、訊きたいことがあるんだけどいい?」
「いいけど……紘哉さんも入ったらどう?」
千尋はドアの前で佇む、紘哉に目を向けた。