「いつもの事?」
「はい。私が不甲斐ないと言って怒るんですよ……まぁ、自覚はしてますけど」
「そうなんですか」
世を背負っていく人としては、割り方穏やかな顔付きをしている。
紘哉はその寂しい頭を眺めながら、相槌を打つ。
「そう言えば、隆宏には会いましたか?」
「隆宏さん……ですか?」
「ええ、家の長男です。よかったら会ってみてください」
「分かりました。そうしてみます」
紘哉は頷き、小さく笑った。
羽兎が小声でボソッ呟く。
「紘哉さん、笑顔がぎこちない」
「うるさい」
いつもの仏頂面になる。
三人はお礼を言い、応接間を後にした。