家族や友達同士だと、口裏を合わせることができる。
よって、アリバイの成立にはならない。
「おじさん、でも……」
「恵一くん、仕事に私情を持ち込んではいけない。特に、君のような職業なら尚更そうだ」
「はぁ……」
恵一は申し訳なさそうな顔をしながら、手帳に目を落とす。
その様子を見た紘哉は、眉間に浅いシワを作った。
そして、信夫に尋ねる。
「そう言えば、先程千尋さんの声が聞こえてきたのですが……」
「あぁ、あれですか。いやぁ、恥ずかしいな」
恥ずかしそうに笑い、頭を掻く。
若干顔が赤い。
「何かあったんですか?」
「まぁ、いつもの事なんですけどね」