「いやあ、まさかこんなことになるとは思ってもいませんでしたよ」

ソファに腰掛けるなり、信夫はそう言った。
昨日より、少し老けた気がする。

「おじさん、大丈夫ですか?」

「まぁ、何とか」

恵一に向かって、軽く微笑む。
そして、おもむろに話し出した。

「昨日の夜は、秀則と話した後、ずっと自分の部屋にいたよ」

「……え?」

「恵一くん、刑事なんでしょ?だから、こう言うこと聞いてくると思ってたんだ」

「……」

なかなかに鋭い。
恵一はポケットから手帳を取り出し、今の証言を書いた。

「でも、確実なアリバイは無いんだよね。部屋にいたり、家族と一緒にいることはアリバイ成立にならない。そうだろう?」

「まあ、そうですけど……」