「モテモテだね…」



さっきまでドキドキして火照っていた気持ちが一気にブルーに


蒼がモテるなんて今に始まったことではない



でも最近、嫌な気持ちになる


蒼が女子に呼び出されたり話しかけられたりしてると




咲良はグッと拳を握り、それ以上感情を作らないようにした


その先の気持ちなんて知りたくない



“自分が怖い”



咲良はそのまま美術室に向かおうとした



しかしそれを蒼が呼び止める



「どこ行くんだよ」



「…美術部員なんだから美術室に行くに決まってるでしょ」



なんだか不機嫌そうだなと蒼は気付いた



しかしあえて聞かない


普段、温厚な咲良が不機嫌な姿を見せるのはよっぽどのことだから



咲良が美術室に向かい、用事を済ませ再び蒼のところに来た



次は教室に行ってお弁当を取らなくては


咲良は蒼の目の前を通り過ぎると、またしても蒼に呼び止められた




「今度はどこ行くの?」



不機嫌を考慮して優しく問いかけた



「……教室にお弁当取りに」



「あ!じゃあ頼みたいんだけど」



「え~‥‥」




口では嫌そうに言ったが、蒼が頼み事なんて珍しい



「頼むよ咲良ちゃん!俺のTシャツと弁当持ってきて!」



パンッと手を合わせ咲良にお願いする


そのセリフと行動がいつものクールな蒼とは違い、可愛らしくて思わず笑ってしまった


蒼の新しい一面を見た



「やっと笑った‥」



「え?」



「いや……早くしないと昼休み終わっちまうぞ」



「ハイハイ」



咲良が急いで教室に行こうとする去り際に蒼がまた話しかける



「あ。弁当持ってきたら一緒に食べようー」



「ぁ……うん」



その一言に再び顔が赤くなり、胸がホカホカ、ウキウキしてきた


蒼の一言一言で一喜一憂


なんか変なの


そんなことを考えながら教室に着いた



教室の前にはすでに誰もいなく、先ほどの女子たちは諦めたようだった



教室に入り、自分のお弁当、蒼のお弁当とTシャツを取り美術室に急ごうと走った



すると教室の扉の前に1人の女子