貧血で早くなっていた脈が少しずつ落ち着いてきた



しかしまだ気持ち悪い


蒼に迷惑かけてしまったなと嫌悪を抱いた


布団をかぶって横になっていると、蒼と保健の先生が入ってきた



「はい。とりあえずこれ飲みなさい」



先生はコップ一杯の水を渡してきた


それをグビグビ飲み干し、再びベッドに横になる



「よくなってきた?」



心配そうに蒼が顔を覗き込む



「うん…ありがとう蒼。ごめんね」



「なーんで謝るんだよ」



そう言って照れ笑いする蒼


久しく見ない間に日焼けして、少し身長も伸びたようでたくましく感じる


ますますモテそうだなと咲良は思った



「少し休んでいけば大丈夫ね」



先生は咲良の脈を計ったりして言った


それを聞いた蒼は安心して、部活に行くと咲良に伝え背を向けた



「高宮くん。部活出て大丈夫?」



出て行こうとする蒼に不思議なことを聞く先生


どこか悪いのかなと咲良は疑問に思っていると



「おばあちゃん亡くなったばかりなのに……」




“え‥‥‥”




「大丈夫です。逆に部活やってたほうが気が紛れますから」



咲良は唖然とした


夏休みだからそういう情報も入ってこない


ショックも受け、何も知らなかったことに嫌気がさした



蒼はおばあちゃんっ子だったのに



『ばあちゃんがさ…やりたいことをやって生きていけって』



そう言って転部までした

亡くなった時、きっとかなりつらかったと思う


咲良までつらそうな顔をしながらベッドから顔を除かせていると



「そんな顔すんなって!」


それを見た蒼が咲良の元に来て話した



「言ったろ。覚悟してたって。だから割と平気だし、何より野球部に転部したって伝えたらばあちゃん喜んでくれたからな」



最後に生き生きした孫を見ることが出来たおばあちゃんは安らかな顔だったという



おばあちゃんのためにも好きな野球をやろうと、今日は部活に来たのだった


でもそのおかげで咲良は助かった



「私もおばあちゃんに感謝しないと」


「ん?」


「おばあちゃんが蒼に好きなことしろって言ってたおかげで、今日は助けてもらったから」



「……ああ。そうだな!」



蒼は優しい笑顔で咲良に微笑んだ


思ったより元気そうな蒼に安心した



「じゃ、その大事な野球をやりにサッサといってらっしゃい!」



そう言って先生に保健室を追い出された


じゃあな、と言って今度こそ出て行く蒼



それを見送りながら咲良は優しい眼差しで笑った