教室に向かう途中、走りながら蒼はありがとう、と咲良に言った



最近、暑くなってきたせいか、走っているせいか肌の熱が上がる


でも一番の原因は今、少し前を走っている人のせい


彼はいつも私の胸を高鳴らせ、暑くさせる



この日、2人の関係は今までとは少し変わったような気がした




「はぁ……はぁ、はぁっ……」



それにしてもつらい


蒼は軽々と音楽室に入っていった


まだ先生は来ていない


しかし咲良はまだ少し離れたところをヨタヨタ走っていた


すると本礼が鳴り、目の前を音楽の先生が通り過ぎるのを息を切らしながら見送った



結局、運動が苦手な咲良は授業に間に合わず先生に怒られ、それを後に蒼にからかわれたのだった





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蝉が鳴り響く中、咲良は汗だくになりながら坂を上っていた



学校は夏休みに入り、今日は午後から部活


部活では統計グラフ製作と夏休み明けに行われる体育祭のための飾り付けで忙しかった


夏休みに入ってから蒼とはほとんど会わなくなった


たまに部活をしているのをチラッと見るくらい


少し淋しく感じ、話したいなと考えながら学校に向かう途中にある坂を歩く


ジリジリと地面から容赦なく暑さが照り返す


次第に頭がフラフラしだして、サーッと体が冷え、汗は冷や汗に変わる


貧血だった


小学校になって以来、たまになるように


咲良は耐えられず、その場にしゃがみこんでしまった


運悪くそこには日影がなく、午後の暑い日ということもあり人もいない



“やばいな………いつもならすぐ治まるのに”


地面の暑さに座ってもいられなくなり、立ち上がって少しでも日影がある場所まで歩こうとした


しかし頭が朦朧として足が動かない


倒れそうになり、グラッと体を傾けた


………しかし体はそれ以上倒れることなく、何かに支えられていた



うっすらとそれを見ると、体を支えている蒼がいた


蒼はすぐに咲良をヒョイッと抱えて、すぐ後ろに止めていた自転車に乗せた


鞄からタオルを出して咲良の頭に乗せ、少しでも涼しくして自分も自転車に乗った



「俺に寄りかかってろ。落ちるなよ」


蒼はそう言ってソーッと自転車を走らせた


咲良は言われた通り、蒼に寄りかかり目を閉じた


少し早い蒼の鼓動が心地いい


だんだん楽になってきた


こんな坂道を二人乗りで、しかも咲良が寄りかかっていられるように立ち漕ぎもしないで上り


蒼は暑い中も必死に自転車をこいで学校に向かった


学校に着くと、すぐ咲良を支えて保健室に


保健室には誰もいなく、蒼は咲良をベッドに寝かせ、先生を呼びに行った